
はじめに

トランプ氏といえばその言動や政策によって、世界中で賛否両論を巻き起こす人物ですが、
ここでは敢えて、筆者個人の意見を述べることは控えさせていただきます。
強いて言えば、筆者はトランプ氏を見るたびに、
『ゴルゴ13』でトランプ氏をモデルにしたと思われる不動産王をスナイプするため、
ゴルゴがパーティーに潜入するシーンを思い出すばかりです。
なにしろこの時ゴルゴはいつもの仏頂面で。
あの派手なパーティーパーティーした三角帽子をかぶり、
クラッカーを鳴らす姿は忘れようとしても忘れられません。
しかも実はそれは……!
と、これ以上はネタバレになるので、話を元に戻します。
まずは再び大統領になったトランプ氏に、
なにが期待されているのかを確認してみましょう。

アメリカ経済の成長期待

トランプ氏が掲げる経済政策の柱は「減税」です。
特に企業や個人に対する税負担の軽減を主眼としたこの政策は、彼の前回の任期中にも大きな成果を挙げました。
たとえば、2017年の減税法(いわゆる「トランプ減税」)では、
法人税率が35%から21%に引き下げられました。
この結果、アメリカの主要企業500社を対象とするS&P500企業の純利益は、
2018年に前年比23%増加するなど企業業績が飛躍的に向上しました。
今回の再選後も、トランプ氏は減税政策をさらに拡大する意向を示しています。
これには、2025年末で期限切れとなる減税措置の延長だけでなく、
年金や残業代の免税措置が含まれる予定です。
超党派の試算によればこれらの政策が実現すれば、
今後10年間で10.4兆ドル(GDP比2.8%)の減税効果が見込まれます。

世界経済への波及効果

アメリカ経済の好調は世界全体にも波及効果をもたらします。
アメリカは世界最大の経済規模を誇り、その消費市場や投資活動が活発化すれば、他国の経済にも好影響を及ぼします。
実際、トランプ氏の前回の大統領任期中には、世界の株式市場が活況を呈しました。
日経平均株価も2016年末の19,114円から2019年末には23,656円に上昇し、
日本の輸出産業を中心に恩恵を受けたことが記憶に新しいところです。
また、トランプ氏の減税政策に伴うアメリカ金利の上昇がドル高を促進し、
それに伴う円安が期待されています。
円安は日本の自動車や電機などの輸出企業にとって、競争力を高める追い風となり、
海外市場での販売拡大につながる可能性があります。
以上がトランプ氏に期待されている、経済効果の主な点です。
では、逆にトランプ氏の再選を危険視する声は、
どういった理由で挙げられているのでしょうか?
本記事では経済においての懸念に焦点を合わせ、それをピックアップしてみます。

保護主義が招く貿易停滞

トランプ氏の「アメリカ第一主義」に基づく保護主義政策は、
長期的にはアメリカ経済と世界経済に深刻なリスクをもたらすと考えられます。
彼は再選後、中国製品に対して最大60%の関税を課す意向を示しており、
その他の国からの輸入品にも10%の追加関税を検討しています。
このような措置が実施されれば、世界の貿易量は大幅に縮小する可能性があります。
世界貿易機関(WTO)の試算では、関税が10%ポイント上昇するだけで、
世界全体の貿易量が約15%減少するとされています。
日本の2023年の輸出額は約98兆円で、GDPの約17%を占めているため、
貿易縮小の影響は避けられません。
先述の通り、自動車や電子部品などの日本の主要産業は、
円安への期待を根拠として、販売拡大もまた期待されていました。
しかし長期的に見れば、むしろ大きな痛手を負うことにもなりかねないのです。

社会の分断による経済損失
さらに、トランプ氏の政策にはアメリカ国内での社会分断を深めるリスクが伴います。
彼の移民規制を初めてとした、人種問題に関する強硬な立場は、
アメリカの労働市場やイノベーションの活力を削ぐ恐れがあります。

例えば、シリコンバレーの労働力の約38%が外国出身者によって支えられていますが、
移民規制が強化されれば、
IT業界や農業などで深刻な人手不足が生じる可能性があります。
人種問題を倫理や道義上の問題と捉え、
それだけで拒否反応を示す方もいらっしゃるでしょうが、
ここで述べているのはあくまで経済におけるリスク、マイナス点です。
事実、特定のグループの経済的機会が制限されると、
消費が減少し経済全体が縮小します。
たとえば、アメリカ国内のヒスパニック系住民の購買力は、
2019年時点で約1.9兆ドルに達していましたが、
差別的な政策や分断が進めば、この巨大な市場が縮小するリスクがあります。

財政赤字と経済の不安定化

トランプ氏の減税政策による経済成長は、短期的には有効かもしれません。
しかしその一方で、長期的には財政赤字の増大という重大な課題を引き起こします。
すでにアメリカの連邦債務はGDPの120%以上に達しており、
減税と歳出拡大の両立は現実的に困難です。
財政の健全性が損なわれればドルへの信認が揺らぎ、
アメリカ経済全体の安定性が危機にさらされる可能性があります。
日米関係の実情

日本国内ではトランプ氏の再選が、
日本に有利に働くとの期待が一部で高まっています。
しかし、その見方には注意が必要なようです。
確かにトランプ氏が安倍晋三元首相とのゴルフ外交を通じて、
良好な関係を築いたことなどが注目されていましたが、
実際の政策を見ると、日本を特別視しているとは言えないのが実情です。
たとえば2018年の日米貿易交渉では、
アメリカ産の農産品の市場開放を強硬に求めた一方で、
日本製自動車への関税撤廃には応じませんでした。
さらに日本がアメリカ軍駐留費用として負担する
「思いやり予算」の大幅増額を要求するなど、
日本を「取引材料」として扱う姿勢が目立ちました。
トランプ氏の外交は、あくまでアメリカの利益を最大化するためのものであり、
日本への好意によるものとは言い難いのです。

おわりに
トランプ氏の再選による経済的な影響は、
一見すると短期的な利益をもたらすように見えます。
しかし、その裏に潜むリスクを見逃すべきではありません。
特に日本にとっては円安や株価上昇といった、
メリットが一時的に得られる一方で、
保護主義政策や分断の影響を避けることはできません。
我々も分断される対象と成り得るのです。
私たちは世界経済が抱える複雑な現実に目を向け、
冷静かつ慎重な判断を下す必要があります。
トランプ氏の再選が「切り札」となるかどうか。
その結論を急ぐことなく、長期的な視点を持つことが求められているのです。
