前回までのあらすじ

リーマンショックによる金融危機の最中、
サトシ・ナカモトという謎の男が提案したビットコイン……
デジタル上のお金を実際に使えようにする仕組みは、
2010年、ピザ2枚と交換されて以来、どんどん広まっていきました。
度重なる取引所へのハッキング事件等々トラブルは何度も起こりましたが、
ビットコインは金塊の如く政府や銀行の都合に振り回されない資産として、
『デジタルゴールド』と呼ばれるほどに成長したのです、
そういわれてからも尚続くトラブルの数々、見つかっていく弱点……
繰り返す上がったり下がったりの末、
2019年にはようやく落ち着いたかな?と思われたのですが……
巻き起こるパンデミックの中で
今から5年前の2020年、我々人類は未曽有の危機にありました。
実際のところ収まってもないのに収まったことにされた……
という意見もあり、現在は捉え方が様々ですが、
あの年は誰もが新型コロナウイルスの猛威に恐れていました。
世界各地で起こるロックダウンの風景に
「あちゃー、人類終わりかー」と思った人もいるのでは。

この未曾有の危機は、金融市場全体に大きな動揺をもたらし、
もちろんビットコイン市場も例外ではありませんでした。
2020年2月には1BTCあたり約110万円だった価格は、3月には42万円まで急落。
この急激な価格下落に、多くの投資家が衝撃を受けました。
しかしここまでビットコインの価値は上がれば下がり、下がれば上がり、
ジェットコースター顔負けの乱高下を繰り返してきました。
コロナ禍はビットコインの思わぬ転機となったのです。
パンデミックの中を前に、各国政府は経済崩壊を防ぐため、
大規模な金融緩和政策を実施しました。
中央銀行が市場に大量の資金を供給し、
金利を引き下げることで企業や個人が資金を借りやすくするのが狙いです。
しかし国が、銀行がお金を増やすということは、
お金が有り余り価値が減る=インフレに繋がる危険性があります。
このような状況下でビットコインの特性が注目されました。
ビットコインはその仕組み上、発行総量が2100万枚に限定されています。
つまり、政府や銀行=中央集権の都合で増えたりしません。

これこそビットコインがデジタルゴールドと呼ばれる所以……。
ビットコインはインフレが起きたとしても、
資産価値をキープできる「強い資産」でもあるのです。
そのことに気付いていた人達は暴落を受けてもビットコインを売らず、
これを機に気付いた人たちは安いうちに買ったれ!となりました。
この認識の変化がビットコインの価値を押し上げる要因となり、
年末には価格が300万円にまで回復しました。パンデミック以前の額を越えています。
パンデミックの混乱はビットコインの、資産としての強さを世間に知らしめたのです。
企業参入と市場の熱狂
2021年に入ると、ビットコイン市場は新たな局面を迎えます。
この年の2月、電気自動車メーカーのテスラが、
約1600億円分のビットコインを購入したと発表しました。
このニュースは市場に大きな衝撃を与えました。

なにしろテスラ……
イーロン・マスクの企業がビットコインを資産として保有したのです。
どれだけ信頼&期待されてるんだビットコイン!
と、多くの人が恐れ戦きました。
さらにイーロンがSNSでビットコインを支持する発言を繰り返したことも、
ビットコインの価格上昇に拍車をかけました。

イーロンがするなら僕も私も!ということで、
ソフトウェア企業MicroStrategyや決済企業Squareなども、
次々とビットコイン購入に踏み切りました。
企業がビットコインを資産保全や多様化の手段として利用し始めたことで
暗号資産市場はすっかり活気づいたのです。
「大企業が認めた」というお墨付きは強く、
新たな個人投資家たちも、続々と市場に参入しました。
その結果4月には史上最高値となる約700万円を記録。
……ここまで来たら、いつものパターンが見えてきますね。
あんまり知らない人が手を出して旧暴落……。
てな具合にビットコインはバブルとその崩壊を繰り返してきました。
しかし、この熱狂的な盛り上がりに待ったをかけたのはさにあらず。
5月に発表された中国政府による、
中国での暗号資産に対する規制のニュースだったのです。
中国の規制強化と市場の混乱

中国政府による暗号資産への規制強化、
とりわけビットコインの取引データの記録
=ブロックを用意する行為=マイニングが禁止されたことは、
市場に大きな衝撃を与えました。
なにしろ当時、中国で行われていたマイニングは、世界全体の約75%を占めていたのです。
多くのマイナーたちは突如として活動場所を失い、国外への移転しました。
この混乱はビットコインネットワーク全体にも影響を及ぼしました。
マイニング能力の低下はトランザクション(取引)の処理速度が遅くなるなど、
多くの問題が発生しました。
市場はこの事態に大きく動揺し、7月には価格が約320万円まで下落しました。
この急激な価格変動に翻弄され、多くの投資家たちは深い失望に落ちます……。
しかし!
この危機は同時にビットコインエコシステムの強靭さも示しました。

マイナーたちはアメリカやカザフスタンなど、
電力コストが安く規制も緩い国々へと活動拠点を移したのですが、
この分散化は結果としてビットコインネットワーク全体の安定性と、
耐性向上につながったと言われています。
インフレとの闘い
翌2022年には世界経済は新たな試練……、
案の定起きた猛威を振るうインフレに直面しました。

多くの国で物価が急騰し、人々の日常生活への影響も避けられません。
アメリカでは消費者物価指数(CPI)が、
前年比7%以上という40年ぶり高水準となり、
日本でも長年続いたデフレから脱却し物価上昇へと転じました。
この状況は人々の購買力低下や生活費増加につながり、
多くの場合で経済活動全体にも影響しました。
この状況への対処策としてアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)など、
主要国中央銀行は金利引き上げという手段を採用しました。
金利上昇によって借入れコスト増加となり、
その結果企業や個人による投資や消費抑制効果も期待されました。
しかしこの政策は同時にリスク資産から安全資産へのシフトも促進するため、
多くの場合でビットコイン市場にも悪影響となりました。
その結果として2022年6月には価格が約190万円まで落ち込み、
多く投資家たちは深い失望感に包まれました。
それでもなお、ビットコインを信じ続ける人々はいたのです。
彼らは長期的視点で保有し続け、市場回復への期待感も抱いていました。
また、この時期の価格下落によって、再び「安いうちに買ったれ!」
という、新たな投資家たちも参入するきっかけになったのです。
NFTとDeFi:新しい可能性
更にこの苦難の日々の中、ビットコインを成り立たせる根幹のシステム、
ブロックチェーン技術を生かした、新しいアイデアが生まれました。
それがNFT=非代替性トークンとDeFi=分散型金融です。

NFTとはデジタルの……
実態のない作品・コンテンツの所有権と取引履歴をブロックチェーン上に記録することで
「私が作りました」「私が買いました」
という情報が明確になり、その真正性と所有権が保証されます。
これによってデジタル作品でも他者によってコピーや偽造をされることのない
『唯一無二』の価値が生まれるのです。
既に多くのアーティストやクリエイターたちは企業等々の仲介者を経ず、
自身の作品から直接収益化する手段として、NFT市場へ参入しています。

DeFiは従来型金融システムから解放された形で、
様々な金融サービス(貸付・融資・取引など)へのアクセスを提供します。
ユーザーは銀行など中間業者なしで直接取引できるようになり、
自身で管理できる金融環境へと進化しています。
またこれらサービスへのアクセス障壁も低いため、
多くの場合従来型金融システムでは除外されていた人々にも。
新しい経済活動への参加機会が生まれるのです。

NFTとDeFiはいずれもブロックチェーン技術という共通基盤から生まれています。そのためこれら技術革新は相互作用し合いながら、
新しい経済圏や価値創造へ寄与しています。
そしてこれら新しい動きは元祖ブロックチェーンの賜物の元祖でもある、
ビットコインそのものへの期待感も向上させていったのです。
回復への道筋
2023年、市場には再び活気が戻りました。
その要因が「ビットコイン現物ETF」の登場でした。
ETFとは上場投資信託のことです。
ビットコイン現物ETFは特定指標に連動し、
株式市場で簡単に売買できるため、多くの投資家の注目を集めました。
この承認により、従来の取引所を介さず、
証券取引所で直接ビットコインに投資できる環境が整いました。
これにより機関投資家や個人投資家が市場に参加しやすくなり、
2023年6月にはアメリカ証券取引委員会(SEC)が複数のETFを承認し、
ビットコインの価格は約450万円まで回復しました。
また、この年には分散型アプリケーション(DApps)が急速に普及しました。
DAppsはブロックチェーン技術を基盤としているので、
中間管理者なしで様々なサービスを提供しつつ、
ユーザーは自分のデータを守りながらサービスを利用できるのです。
前述のとおりこのような動きは、
ビットコインやブロックチェーン技術全体への信頼を高め、
市場全体の成長につながっていったのです。
半減期と環境問題
翌2024年。この年は四年に一度、ビットコインのマイニング報酬が半分になる

「半減期」の年でした。
新規発行量が減少し、ビットコインのレアリティが上がる
……と、期待されるタイミングです。
実際に、半減期後には再び価格上昇基調を見せ、
1BTCあたり40,000ドル(約500万円)を超える水準に達しました。
しかし、その喜びの陰で新たな課題も浮上しています。
それは先述したマイニングに伴う膨大な電力消費問題です。
ビットコインのマイニングに必要な電力は。
特定国の総電力消費量を超えています。
中国の規制をきっかけに海外に移住したマイナーは、
電気代の低い発展途上国に移り住んだ人も多いのですが、
済んでいる村や町全体がしょっちゅう停電になっているという話もあります。
この問題への対策として再生可能エネルギーを活用したマイニング施設の増加や、
エネルギー効率の高いハードウェア開発が進められています。
持続可能=SDGsという言葉を聴くと、反射的に「説教かよ!」
なんて拗ねる方もいらっしゃうでしょうが……。
どうも工夫しなくては続けられない、続けなくてはいけないことは山ほどあるようです。
まとめ

2025年を迎えビットコイン市場はかつてない成熟期を迎えています。
各国の暗号資産規制の整備が進み、市場の透明性は向上しています。
例えばヨーロッパでは
「MiCA(Markets in Crypto-Assets)」という規制枠組み導入されており、
それによって投資家安が心して取引できる環境整備が進んでいます。
日本でも暗号資産取引所への規制強化税制改正など、
市場環境改善の取り組みは進められ続けてています。
これらの動きによってビットコイン=暗号資産は、
単なる投機対象ではなく世の中の経済システム……
いえ、社会構造自体を変えるきっかけになるかもしれません。
インターネット上の、ハンドルネーム以外は何一つ知られていない人物が、
不意に発表した概念が、ここまで進化したのです。
それは確かに、激動の物語でした。
この物語に乗っかるか、
あるいは新たな物語を探すか、作るか……。
あなたなら、どうしますか?